ドライマウス
近年、口の中が異常に乾くという方をよくみかけるようになりました。口の中の乾きを病気として考えるようになったこともあります。また、現代社会のもたらすストレスが唾液の分泌を抑えていることも十分留意すべきことです。
たとえば、人前で話をしようとしたときのことを思い出してください。無意識のうちにのどが渇くことがあります。また、気持ちよく横になって居眠りをしてしまったとき、唾液を枕につけたことはありませんか?前者は緊張というストレス状態で、唾液の分泌が抑制され、水分の補給が必要になった状態です。一方、リラックスした状態では唾液の分泌も盛んになります。通常健康な人でも一日1~1.5リットルの唾液を分泌すると言われます。その唾液の役割は次の作用があります。
唾液は大唾液腺と小唾液腺から分泌されます。大唾液腺には耳下腺・顎下腺・舌下腺の3つがあり、小唾液腺は舌や粘膜面に多数存在します。
1 消化作用
唾液の酵素ででんぷんをマルトースに分解する
2 溶解作用
味物質を溶解し味覚を促進させる
3 洗浄作用
食べ物のカスを洗い流す
4 円滑作用
潤滑性や粘性を与え発音や会話をスムーズにする
5 抗菌作用
病原微生物に抵抗する
6 緩衝作用
pHを一定に保ち細菌の繁殖を抑える
7 保護作用
歯の表面に皮膜を作り虫歯を防ぐ。また粘膜が切れたり傷つかないように保護します
このように唾液には私たちの健康を守ったり社会生活を円滑に行う事を助けたりする力を持っています。口腔乾燥症(ドライマウス)は虫歯や歯周病の原因になったり舌の痛み、口臭、しゃべりづらい、入れ歯が入れにくい、味がよくわからない、物が飲み込みにくくなったりなどさまざまな症状を引起します。
その原因は、加齢と共に唾液の分泌量は減少します。また薬の副作用や糖尿病・腎不全などの全身疾患、喫煙やシェーグレン症候群など複合的な要素が絡んでいることもあります。
ストレスが長期にわたって続くと自律神経が失調し唾液の分泌が抑えられることになります。また食生活の中でも柔らかいものばかり食べていると、良く噛むということがなくなり口の周辺の筋肉が弱くなり唾液の分泌も悪くなります。
1 唾液腺刺激療法
- 食事を意識して良く噛むことを心がけたりキシリトールガムなどを噛んだりして、咀嚼による刺激を与える
- 唾液腺のマッサージ
- 唾液分泌を促進するような食品(梅干・レモン・酢の物など)を摂る
- 舌体操・口腔体操を行う
2 粘膜の保湿
洗口液によるうがい。人工唾液の使用、水分の補給
3 唾液分泌促進薬の使用
食べ物のカスを洗い流す
4 虫歯や歯周病の治療
歯石除去やクリーニングにより口の中の細菌数を減少させる
5 抗真菌剤を適用
口角炎や舌炎、口腔カンジダ症などカビ菌が増殖している場合には抗真菌剤を適用することもあります。
ドライマウスはさまざまな病気を原因とした症状のひとつとして現れることもあります。その場合は原因となる疾病の治療を行います。ドライマウスの治療として人工唾液や唾液分泌促進薬を用いる事もありますが、水分を十分とって頻繁にうがいを行い口の中の清潔を保つ事が必要です。また、精神的にも気持ちをリラックスさせ唾液の分泌を促すことも大切です。
口が乾燥すると虫歯になったり、ばい菌が増えて口臭が発生することがあります。その他胃腸の調子が悪い場合も口臭が発生します。
また、唾液が減って口が乾燥すると、ばい菌が流されずに残り唾液の中にある抗菌物質が少なくなるため、ばい菌が増えてきます。このような状態が虫歯を増やします。
ドライマウスに起因する合併症として、アフタ性などの口内炎、舌炎、口角炎などが良くみられます。また、真菌(カビ)の一種であるカンジダの増殖による口腔カンジダ症がみられることも多く、頬や口蓋の粘膜が赤くなっていたり斑点状の白い物が付着していたりする場合があり、舌全体のヒリヒリ感や違和感など舌炎や口角炎の発症にもカンジダが関与していると考えられています。
シェーグレン症候群は、涙液分泌低下(ドライアイ)、唾液分泌低下(ドライマウス)等の乾燥症状と関節リウマチを主徴とする全身性の自己免疫疾患です。関節リウマチ患者の19.4%がシェーグレン症候群を合併しているとの調査結果があり、関節リウマチ患者の中に潜在的な患者が多く含まれている可能性があります。
シェーグレン症候群によるドライマウスでは唾液分泌促進薬(塩酸セビメリン)の使用が最も有効です。
